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2015年9月4日

「精神と芸術」座談会 (7)


―健全なる精神と健全なる身体―
出席者 亀井勝一郎・島崎敏樹・丸山薫・斎藤玉男・荻野彰久
(東京 荻野邸にて)

丸山 桑原君はこういう事を云っています。東北大学へ行きましたらね。学生達が終戦後ですから詩人なんかやってくると少し眼につく。皆が聞くんですね、結局、詩なんか出来るとき非常に興奮した状態になるんですかとか、何かいろんな事を聞くんですね。その時、桑原君は云っていましたね。いや、小説でなくとも評論でも、やっぱり、脇の下に汗がでてこないと駄目なんだ。静かに考えている時は、こんな物を書こうあんなものを書こうと構想を考えている時は、やっぱり筆が進まない。非常に興奮してきて、脇の下に汗がでる。まあ、お相撲さんが、これから取組むというああいう状態にならないと書けないと云っていましたね。
亀井 そして二、三年経ってから、それを読み返しますと、イヤですね。僕の場合は。人をやっつけた文章などは非常にイヤですね。何故、ぼくはこの場合もっと静かに沈潜してゆっくりやらなかったかと。大向う目当てに如何にも気のきいたような言葉を書いたのち、自分の本をまとめる時はヒヤッとしますね。
荻野 評論も非正常でないとやっぱり具合が悪いですかね。
亀井 まあ、ぼくは正常なんですがね。何か殺気だっていますよ。やっぱり。(笑)
丸山 しかし、小説はどうですか?
荻野 やはり―。
亀井 こういうことが云えます。外的条件ですが、今の小説ができると云うことは締切りを迫られると云うことです。外的条件ですから印刷所の校正室にいかなければ書けないという事が出てくる。そこまで切端つまって書かざるをえなくなる。
島崎 そういう習慣の人が沢山います。例えば、中野好夫さんも出版社に行って、そこで原稿を書かなければ駄目なんですって。
亀井 日本だけでなく、ヴァレリイのものを読んで見ましたが、その中に現代の文学が完成すると云うことは、本当いうと、文学は推敲に推敲を重ねていけば完成するのに一生かかるものでして、まあこれは一種の例えですが、現代ではそれを抽出するのは、すべての外的条件です。編集者の催促で、すべて編集日が迫り、お金がいるし、肉体的にも疲れて来ると云う外的条件に依って生じた中絶状態を、いわゆる完成したとみなすんだって、何かそんなことを書いていましたね。
丸山 その外的条件が去った時は興奮状態が収まる。もうそこへ入れませんから、そこへそれ以上推敲することが出来なくなる。完成の姿になりますね。



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