2015年9月15日
「精神と芸術」座談会 (14)
―健全なる精神と健全なる身体―
出席者 亀井勝一郎・島崎敏樹・丸山薫・斎藤玉男・荻野彰久
(東京 荻野邸にて)
潜在意識と前衛芸術
丸山 文学に三つの革命があって、その初めが地動説ですか、その次ぎは進化論ですか、それから、フロイドの学説ですか? 今日は、精神科の先生方がいらっしゃいますから、潜在意識、そう云うような問題に入って行きたいと思います。それから、前衛芸術ね。あれも非常に意識的なものですね。けれども、シュルレアリズムなんて云うのは潜在意識にメスを入れていますね。そんな前衛芸術の方も少し御意見を聞きたいんですがね。まあ、はじめにお医者さん達の御意見をうかがいたいのですが。
島崎 実は、今日書き上げて来たのです。あんまり生でもって、一寸、今日は。実はずっと前に岩波新書に一つ出しましてね。その続篇と云いますか二番目の頼まれて居たんですが、なかなか書けなくて、いよいよ締め切りが来まして、十月一杯で全部書き上げて清書まで終えろと云うので、夏休み前から、かかって、今日書き上げたのです。
最後の一章と云うのが今のモダンアート論です。今のお話を聞いて、ギョッとしちゃったんですがね。(笑)
丸山 じゃあ、モダンアートから入った方が良いですね。
荻野 そうですね。
丸山 前衛芸術っての、あれは、結局、書でも彫刻でも、なんでもこれは何かと云う事をすぐききたがるんですがね。それは、まあ非常にいけない事で、何であろうがいいんだ。何か感じとればいい、そういう事をその道の人が云うのです。けれどね、私の考えによると、何かと聞くのは何も感じられないから聞くんじゃないかと、もし感じたら聞かないんじゃないかと思う。いいなあと、こう。そういう風に表現して良いと思うのです。そしたら、やっぱり勅使河原蒼風さんが何か云って居られましたが、「前衛芸術というのはつまらないものが多いです」なんてね。あれ、自分のものはいいということになりますかね。意地悪く取るとね。とにかく、なんかそういうようなことを云っていましたね。
前衛芸術に対してどういう風にお考えになりますか?
島崎先生がお考えになったことはどうですか?