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2015年10月2日

「精神と芸術」座談会 (25)


―健全なる精神と健全なる身体―
出席者 亀井勝一郎・島崎敏樹・丸山薫・斎藤玉男・荻野彰久
(東京 荻野邸にて)

荻野 初めぼくは精神異常者じゃないかと思ったんですよ。云うことがはっきりしないんですね。志賀直哉読んだような気がしないんです。スーッとしなくて。はっきりしないんです。そうして、終りに突拍子もないことをずっと出すんですね。丸山さんはそれを模様を描いているというんですがね。例えば、落ちみたいな所では、自分のアームスを黒人に提供するのです。私がと書いてありますから、私という主人公が提供するような場面ですね。非常な不潔な印象を残すものですね。そこまでに至る経過が何ともかんともやり切れない、現代青年の意識がそこに流れているのが、一寸汲みとれるんですね。それで終りにいって、ふっと浮び上るんですね。全体のイメージが、主人公の性格もふっと浮び上るんです。その点が、非常に才気走っているのですね。頭がいいんですね。ですから、妙に政治と結びつきますね。その概念が。
亀井 ぼくもあれは政治家の漫画と同じようなものだと思います。そう云う不潔感ていうものを故意に書いているんです。
荻野 そうです。意識的に書いているんです。
亀井 なにかをねらっているんです。
島崎 ポーズをとっているわけですね。
亀井 まだ若いからね。
荻野 すっきりしないんですね。そこまでゆく過程が何だか知らないが、すっきりしないんですね。何時もスーッとした描写がない。明哲ではないんですね。そんな感じですね。明哲な感じは一つもないんですね。
島崎 論理に頼ると云うことはいけないことですね、今の時代では。アリストテレス論理というのは。いま、明るい論理は一番いけないんでね。論理をはずしたそういうような何か不条理っていったような、そういうものでないといま通らないのですかね。そういうものを意識して書いているんでしょうね。



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