2015年10月8日
「精神と芸術」座談会 (29)
―健全なる精神と健全なる身体―
出席者 亀井勝一郎・島崎敏樹・丸山薫・斎藤玉男・荻野彰久
(東京 荻野邸にて)
精神病と精神医学
島崎 わたしの大学で、近頃精神病の発現があって困ったんです。平均人口の三倍と書いて、数百人に一人ですが、それが三十何人に一人、それがでますと、全然治らない廃人になっちゃう。
どうして、こう高いのだろうと教授会でわたしが犯人のように云われるんですけどね。
つまり、入学試験のとき、はねてくれっていうんです。わたし面接委員してるもんですから、しかし、発病していないのをみつけて、はねつけるわけにいかない。ガンにならないものをガンだと云うわけにゆかない。
荻野 ああ、学生でですか?
島崎 はあ、結局、何年か浪人しないと入れないんですよ。ですから友達づきあいしないで、一入部屋に閉じこもって、勉強ばかりしている。人嫌いで、内省的で、勉強できると云うよりそういう性格のものが入っちゃうんですね。
荻野 うちにも浪人が一人いるんですが、毎朝歩けというんですがね。
島崎 そういう精神分裂症を発現するために、医科大学へ入れているようなものですね。やっぱり困りますね。ですから、わたしの解決法はよく皆なに笑われるんですが、初めの40人をはねちゃう。次の40人もはねちゃう。その次あたりを取ったら、相当勉強ができるしね。面白いと思う。
荻野 そりゃあ、いい考えですね。健全な考えで。(笑)
島崎 お医者さんとしてもその方がいい。
亀井 いまの子供なんかみていると面白い。うちの子供はなにをやったらいいかもわからない。しまいにはええい、面倒くさい。小説書くかな。
何もできなかったら小説家。
荻野 (笑) 儲けてやろうなんてね。