2015年10月15日
「精神と芸術」座談会 (33)
―健全なる精神と健全なる身体―
出席者 亀井勝一郎・島崎敏樹・丸山薫・斎藤玉男・荻野彰久
(東京 荻野邸にて)
丸山 斎藤さんや島崎さんに失礼ですけど、先生方は絶対そんなことはないと思うんですが、精神科のお医者さん自体かわった人が多いときいているんですが、たとえば、私の知っている中野嘉一君なんか。
荻野 ああ、詩人の……。
丸山 ええ、非常に紳士なのですがね。だれといって人に迷惑をかけないのだけれど、挙動なんか見ると、一寸おかしい。詩もものすごくわからない。挙動がたしかにおかしい。非常におちつかなくて、何をいってるのかわからない。それから、斎藤茂吉さんで、すね。あの人、ものすごく喧嘩が好きなんです。野人だったらしい。
亀井 喧嘩の名人ですよ、あれは。脳病院なんか経営していらっしゃる先生なんて、変っている人が多いんですね。あれは、あ々いう風になるんでしようか? そういう病人の関係で―。
島崎 いや、近頃は脳病院の経営者というのは、それこそ芸術家じゃなくて、実業家だからね。
丸山 ああ、そうですか。
島崎 非常に経営のセンスのある。
若い人達は営利の才がありましてね。ですから、それもさっきの大江健三郎というのかも知れませんね。最近の人は、そう云う所、タフで、今の話はわれわれ位から上でしょうかね。
斎藤 どうでしょう。だんだん若い人ほど、最近は精神科というのは引き合うというが。
荻野 精神科病院を経営することが?
斎藤 ええ、そういうために精神科をやる人がふえました。引き合うってわけですね。精神科の病院経営をして。
島崎 もとは、そうじゃありませんね。親爺もい々顔をしませんし、親戚なんかも折角医科大学を卒業したのに、あそこの息子さんは精神科なんかに行っちゃって、お父さんはどんなにお歎きでしょうなんて云いますしね。
斎藤 本当なんです。