2015年10月19日
akira's view 入山映ブログ 世渡り
自分のすることに自信が持てなくて、絶えず人の顔を見ている、というタイプは何も個人に限ったことではない。早い話がわれらが日本国などというのはその筆頭で、自ら意味があると思う途上国援助を黙々とやっていれば良いのに、「顔の見える援助」でなくてはならぬ、と人の目の映りを気にする。テロとの戦いは日本の国是だといえばよいのを、インド洋給油中止は国際世論がどう見るだろうか、とくる。移民労働力の確保は少子高齢化時代に向けて必須であるのみならず、東南アジアの高学歴失業者救済に役立つ、として政策化すれば良いのを、世界先進諸国に較べて移民(あるいは難民でも良い)受け入れ実績が余りに低すぎることもあって、と言い添えないと安心できない。
もっとも、わが途をゆくのが唯一無二の正義で、恬として恥ないのみならずただひたすらにその路線を邁進する、というのに較べれば、どちらがどうとも言えないのかもしれない。そんな路線を採用する国の筆頭は中国とアメリカだろう。食品に対する違法添加物などわが国にはない、といったらない訳だし、人権抑圧などとんでもない。国法に背いた輩にしかるべく対処しているだけの話に過ぎない。温室ガスなどというのは、先進工業国が途上国発展を疎外しようとしている悪だくみに過ぎないからそんなものは気にしないし、資源確保の要請の前には人道問題や政治腐敗など問題とするに足りない。加えてお膝元の腐敗などというものは人様にとやかく言われる筋のものではない。かくして経済成長路線を突っ走るのが中国ならば、アメリカン・ウェイの民主主義こそが唯一至上であるとして、風土・経済力なんぞは無視してその押し付けに狂奔する。識字率が一割そこそこの国に普通選挙制を導入すれば世の中が良くなる、と信じて疑わない。のみならず正義と人道のため、と警察官さながらに送り込んだ軍隊が、地元民衆の信を完全に喪って本来目的は到底達成できなくなっても、なお信念に忠実であり続ける。
例えばアフガニスタン。先にも触れた(11.22「オバマ(2)」)ように、イランの泥沼から早く抜け出して、憎さも憎いアルカイダを掃蕩すべくNATOと語らって攻め込んだところまでは良かった。ところが、地上戦での志願兵の消耗を最小限にしたいこともあって空爆が多用される。年間1万2千回に及ぶ空爆のうち約三分の一が誤爆だという。要するに武装勢力でもなんでもない一般市民が巻き添えになる可能性が高い(のみならず現実に被害も出ている)ということだ。だから、パキスタンのアフガニスタン国境地域の住民は、これは「米国の戦争だ」と思っているという(数字・コメント共に2月4日・日本紛争予防センター第21回講演会におけるオクラザイ退役陸軍中将)。
わが途をゆくのも困ったものだし、人の顔ばかり見ているのもいささか、となると、世を渡るのもなかなかだということになろうか。
2010年 02月 05日