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2015年10月21日

「精神と芸術」座談会 (37)


―健全なる精神と健全なる身体―
出席者 亀井勝一郎・島崎敏樹・丸山薫・斎藤玉男・荻野彰久
(東京 荻野邸にて)

荻野 儲かるとか、儲からんとか、そういうことを超越して、そういう学生もありますね。しかし、文明がこうなると、どうしてもそういう傾向に達するんですね。
斎藤 大江式、そういう生き方が若い学生にだんだんしみていきますね。
伊豆の大島にある藤倉学園。あそこはこの頃はね、大学の文学部の卒業生で、一生ここで仕事をさせて貰いたいと云っているんですね。3人か5人あります。
島崎 そういうのは真面目ですね。
斎藤 それを断わるのに骨が折れる。向うのそんなにいらないんですから……。
そりゃ真面目なんですが、自分流に生きたいというところがあるんでしょう、その人はね。
島崎 そういう処で、やろうという心掛けがあるんですね。ちょうど、シュバイッアーみたいなものですね。
斎藤 そうなんですよ。
島崎 つまり、組織社会にいたんじゃ、個性がなくなっちゃうから、社会を飛び出して、孤独の場で自分を育てるという。あ瓦いう特殊事業をめざす人ってのは、どうもそういう異端児なんですね。
斎藤 受け入れ側は、一寸迷惑する場合がある、感激しすぎてしまって。
島崎 ああいうのに限って続かないんですね。(笑)
斎藤 そうですね、ええ。
荻野 小説家でも、フロイドの精神医学をもっと取り入れる方がいいと思うこともありますけどね。
斎藤 そうおっしゃられると、精神医学というものが、ものぐさだということを教えられるのですが……。
島崎 ところがね、先生.ぼくはいろいろの人と会って思うのですが、精神医学は第二科学論というのを云ってるんです。つまり、俳句が第二芸術だというのとは違いますが、ぼくはどうも精神医学というのは第二科学だと思うんです。
自分の学問の方向と立場をもっていないんです。いつもよそから借りてこないと、自分が成り立たないんです。
非常に困るんです。
斎藤 ええ、そこですよ。
荻野 医学全体が、ある程度そうじゃないんでしょうか。
島崎 でも、バリモシイならいいんですよ。
精神医学はベルグソンとか、ニコライ・ハルトマンとか、ヤスパースとかそういうものがないとね、展開できない。



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