2015年10月28日
無極庵記(3)――詩的遺書 成瀬無極
微笑みは皺にあらず、
微笑みは光の本質(もと)なり、
差し入りて照らすは真(まこと)の光ならず。
太陽は光ならず、
人間の顔にこそ
初めて微笑として光は生るれ。
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呼吸は最高の気息(いぶき)の本質(もと)なり。
牧場に森に叢に、
忍び入る風にはあらず、
木の葉をかへすそれにはあらず、
人間の呼吸に於てこそ神の気息(いぶき)は生るれ。
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人間の歩行に於てこそ自由の道は生るれ。
人間の歩行を以てすべての心臓と門戸より
神の優美と遍歴は始まる。
微笑・呼吸・歩行は
光・風・星の道に優れり――
世界は人間に於て始まる。