2015年11月5日
「とんち教室」あれこれ(3) 岩佐東一郎
この「とんち教室」の録音は、日本では使用したあと、ハワイ放送局や南米ブラジル放送局へ航空便で送られて在住の日本人をよろこばせている。だから、海外での使用料が届けられるが一弗ぐらいだ。
地方へ行くと、「とんち教室」のことを「とんちき教室」と思いこんでいる人が多い。「とんち」でも「とんちき」でもいいようなものの、一寸くさらされる。何年か前のことだが、長崎抜天が図案したバッジを、とんちメンバーが胸に付けることになった。青い小鳥が赤いリボン付け、肩から下げた黄色いカバンにNHKと書いたバッ ジで、ゲストでも三回以上出席したら渡される規約だ。失うと一ケ百円で買わねばならないのだが、一番多く失ったのは石黒敬七で、それというのも夏など、開衿シャツやアロハに付けたまま洗濯屋へ出してしまうため失う機会が重なるのであろう。とんちのバッチといえばいいのを、とんちのマークということもあるから、これを略していうと、とん(・・)マ(・)になってしまう。
ぼくは夏冬とも和服にハカマをはいて出席しているため、いつかNHKの廓下で藤浦洗が「なんだか、役者か落語家みたいだぜ」と笑った。彼は和服の趣味がないから区別がつかないのであろう。だから「何をいうんだい、トビラ屋」といったらば、急に眼をシバシバさせて「卜、トビラ屋はひでえや」としょげたのである。(詩人)