2015年11月10日
獅子は子を(3) 板倉靹音
名古屋に梅田さんという優れた鶯飼いがある。この人から聞いた話である。山へ鶯の雛を取りに行った梅田さんは或る時、妙なことにぶつかった。灌木の中に腰をおろして一服やっていると、「キョン」という声がした。大体雛をとるには二つの方法がある。一つは巣子をとるので、あまり移動しないで,鳴いている雄の近くには巣があるのだから、あとは雌が餌を運ぶところを見つければいい。もう一つは、巣こぼれ、つまり巣立ったはかりの雛をとる。それには親の鳴き声で雛をつれているかどうかは見当がつくから,その後をつけて行けばいい。