2015年11月13日
アデレ-ド碇泊(1) 丸山 薫
ポート・アデレ-ドに入ったのが八月中旬の午后。上陸を明日にして、ケビンで船員の一人と葡萄酒をのんでいたら、窓の外の甲板で、ガヤガヤ囃し立てる声がする。四、五人の波止場人夫の碧い眼が円窓(スカッツル)から僕らの酒卓の方をのぞきこんだとみる、矢庭に毛むくじゃらな太い腕が一本、ニユーッと突っ込まれて、それが肱の関節を基点にして挺子のように上下運動をしはじめた。その運動につれて、こんどは手首を軸としてこぶしだけが、くるりくるりと微妙な回転をする。言わずと知れたあの男性のシムボルが、股間に生動する有様を誇示したものである。
――イヨー、おたのしみだな、ジャップの船員さん。これからお揃いで繰り込む寸法かい。
腕は無言でそんなことを云ったつもりなのだろう。
彼らは騒ぎながら仕事の方に去ったが、つくづく感に堪えた事、SEXにかかわるかぎり、洋の東西なくそのイメエジに変りがないという発見だった。
僕らの小学校や中学校時代、悪童どもがよくそれとそっくりな腕の芸当をしてみせて、友人たちを笑わしたり、育ちのいい坊ちゃん連を当惑させたりした。三等重役の小父さんたちならいまも女の前でやりかねない、アレなのである。