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2015年11月24日

akira's view 入山映ブログ 新しい公共(5)

 シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の月例活動報告会が「新しい公共」を取り上げるというので参加してみた。顔ぶれはシーズの代表理事で行動力、理論性を兼備したNPO界の代表的論客松原明、例の円卓会議の座長金子郁容慶応大学教授、市民公益税制プロジェクトチーム委員の大島敦衆議院議員と、魅力的なラインアップだったことも参加した理由の一つだ。

 鼎談という触れ込みだったが、時間が一時間半という制約もあって、実質的には松原氏が鋭くご両人に質問で切り込み、それにお二人が答える、という進行になった。論点は多岐に亘ったが、やはり一番の中心は「新しい公共」とは何か、なぜいま「新しい公共」かという点にあったというべきだろう。松原氏が冒頭に指摘したように、このコトバは’90年代に世田谷で使われたのを嚆矢とし、その後小渕内閣が「新しい公」を唱えたという先例はある。しかし、その意味内容、まして「なぜいま」については、金子氏も自認したようにかなり漠然としたものに留まっているようだ。

 席上配布された資料によれば、言い出しっぺの鳩山総理の所信表明演説中に、「「新しい公共」とは、人を支えるという役割を、「官」と言われる人たちだけが担うのではなく(中略)一人ひとりにも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観です。」というくだり。さらには「NPOに関して申し上げれば、新しい公共の当然ある意味での中心的な担い手」(この人の演説にはどうして「ある意味での」という限定フレーズがこんなに多いのだろうか。断言が怖いのか、後で言い逃れをする用意なのか。一国の指導者の言としては誠に不適切だと思われてならない。オバマ大統領が、健康保険問題は in a sense あるいはmight as well be重要な課題だ、などと言う訳がない)。さらには「寄付税制、これはまだ貧弱なものだという認識は私も感じておりまして、これをもっと積極的に拡充していく(後略)」とあったのが拠り所になっている程度のことのようだ。

 だから、この席上で金子氏からも、一人一人が支え合う、あるいはお互い気を遣う、というのがおおかたの意味内容だ、という極めてあどけないレベルの発言しかなかったのも当然と言えば当然であろうか。あどけない円卓会議がのんびりと「お互いに気を遣う」手法について議論をしている間に、公益認定を巡っての法制度改悪によって、「新しい公共」どころか市民による公益の実現そのものが確実に死滅しつつある、というより官の手によって殺戮されつつある(3.9「ないものねだり」)。公益法人とNPOは似て非なるものだ、と思わせる、というのも「分離し、統治せよ」という権力の常套手段だということに思いを致した方が良いのではないか。

2010年 03月 20日



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