2015年11月30日
あけびの花に寄せる寸想(5) 斎藤玉男
精神医学の分野はすぐさま民族の文化の厚みに響くが、精神医学のありようは民衆の福利と膚接する限り、専門看護の精粗高下で判定されることになる。つまり精神医学の纏う笹べりの織りの細かさ、縫いの親切さが文化の厚みに品位と奥行とを与へることになり、それが即ちその時代の文化財を形成する。そしてその姿が時代の詩と隣同士でないとは言われないであろう。その限り昭和の時代も「あけびの花の散らふ」おののきからあけびの蔓の伸びる逞しさにたぐへられる面を育て上げたい。(昭和31、4、14)
(日本医大精神科前教授)
(註1)高村光太郎氏の知恵子夫人は最後まで斎藤先生の病院に入院しておられた。
(註2)斎藤茂吉氏のこと。