2015年12月21日
akira's view 入山映ブログ 「官」と「民」
税金の使い勝手について、その執行過程にいかに「民」の創意工夫を生かすか、「民」の主体的関与を保証する仕組みを作るか、という現実的な知恵の出し具合が問われている、と前回に述べた。税金の使い勝手というのは広い意味での公的サービスだ。際限もなく公的サービスを要求しがちなメンタリティ(政府は何をしている。政府の適切な対応が望まれます。)は「民」の側にもあるし、まして「官」はそれをよいことに守備範囲拡大を虎視眈々と狙っているのはいうまでもない。
だから公的サービスの執行過程に「民」の創意工夫や主体的関与を保証する仕組みが大事だ、ということになるのだが、今回の鳩山内閣の「新しい公共」がこれをないがしろにして、あらずもがなのお節介だけしているかというと、そうではない。そうしたサービス供給に関わる「民」の組織について、税制上の優遇措置(「優遇」というのは、なんだかオカミが特にしてつかわす、という響きがあって好きな表現ではないが、便宜使用する。)を講じる、というのが目玉商品になっているのは評価できる部分もある。(なぜ「部分もある」などという持って回った言い方をしているかについては後に触れたい。)
税金面で措置を考える、という場合二つの側面があって、ひとつはそうした組織の所得に対する課税を減免するやり方だ。これは無数に存在する租税特別措置、いわゆる「租特」と同じ考え方だと言ってよい。産業振興の為に税金の特別措置を考えるのなら、公的サービスの一端を担おうという「産業」にも同様の措置があってもおかしくあるまい。もうひとつは、そういう組織に対する寄付に関わる。
公的サービスの一端を担おうという民間組織は、株式会社のように、配当や株の値上がりを狙った資金が流入したりしない。だから、志を評価してその活動に協力しようとする人の援助・寄付が大きな財源になる。(実はそれ以外に、他でもない税金そのものの方がもっと大事なのだが、これについても別に述べることにする。)で、寄付をする側の人に、寄付をした分だけ所得税額から控除する(これにもいろんなやり方があるが、ここでは細部には立ち入らない。)というインセンティブを設けることによって、いわば寄付者をその気にさせよう、という政策が出現する。
今回鳩山内閣の「新らしい公共」は、この税金面での配慮は実行するようだ。そのかぎりでは評価できないでもない。ただ、問題なのは、どんな組織になぜ税金面での配慮をするのか、という基本的なところで、例によって不勉強な結果、守備範囲拡大を虎視眈々と狙っているお役所の思い通りになってしまっていることだ。これまた例によって、それには全くお気付きになっていない。
昔から、権力側が自己権力保全の為にとる策略というのは、大した被害のないところで相手に花を持たせる、その一方で、対抗勢力が一致結束しないように、極力内部分裂や相互抗争を助長する、と決まったもので、これはローマ時代の「分離し、統治せよ」から変わるところはない。鳩山内閣がいかに簡単にこの策に引っかかっているか、その詳細については次回以降に。
2010年 05月 19日