2015年12月21日
大菩薩峠(4) 桑原武夫
『大菩薩峠』では机竜之助はもちろんのこと、主要登場人物がすべてアウト・ロウ(out-law)だ、ということは従来あまり指摘した人をきかぬが、そしてこの着眼は生島遼一君と私との雑談ではっきりしたことだが、将来大きな手がかりとなるべき点にちがいない。
私は色々忙しい仕事があって、目下ひまがないので、この国民文学を研究するひまがない。ただ、このあいだ大学院の秀才連と一ぱい飲んださい、この小説の面白さをしゃべり立て、若干の仮説をのべ、大いに扇動しておいたところ、もう半分以上もよみ上げたというのが数人あらわれた。私は昭和のはじめに全巻読破したが、再読は半ばまで来て意識的に停滞させてある。そのうち日本文化史や国史、文学、心理学などの若手の学者諸君と共同研究でもやれたなら、これが今年の正月からいだいている私の夢である。(京大文学部教授)