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2015年12月24日

中国所見(2) 北川冬彦

北京、上海の目ぬきのところから較べると、道は凸凹で、共同水道栓の流しには野菜屑が散らばったりして、うす汚いけれど、日本の細民街よりは段違いに綺麗である。
私はここで、めずらしい共同便所(厠所)を見た。日本では古い言葉となっているこの厨所の字には、好感を持ったものだが、中国の共同便所は、ホテルは別として、糞壼がずらりと並んでいるだけである。ボツクスにもなっていないし、仕切りもない。用を足しているお互いはまる見えである。昔の満州あたりでは、どこでも空地に垂れっ放しだったから、これでも随分進歩したわけである。ところで、この細民街の共同便所は、コンクリートの溝だけの日本の小便所に似ている。その点は別に珍しくもないが、珍しかったのは、その便所の横壁に、丁度郵便ポストの口ぐらいの矩形の穴が明いていることだ。便所の隣に部屋があるので覗いて見ると、そこに矩形の穴があるが、それはさっきの穴で、その穴から、便所がのぞけるのである。この部屋には坑があり、人が住んでいる様子なので、案内の人に聞いて見る、婆さんが一人住んでいるのだそうである。そして、この矩形の穴は用たしの紙を売る場所なのだそうだ。一枚日本金の二銭で、あわてて紙を忘れてきた者がこの穴から買うのか、それとも紙を持たずにきて買うのか、ともかく婆さんは、これで生計を立てているのだそうだ。日本人の神経では、便所がのぞまれる明けっ放しの穴のある部屋などに住めるものではないが、平気で住んでいる。すぐ掃除するから臭気はないだろうが、少なくとも用が足されている間は嗅わないわけはないのに。
 陽(奉天)の労働者のアパ-の便所は、二世帯に一つ、ごく狭いが水洗だった。ホテルの便所は、一部屋一部屋に西洋式の水洗がついていたが、別に共同のがあり、西洋風のと、日本風のしゃがめるのと二通りという叮嚀さである。国慶節のとき、王府井(東京の銀座通り)や天安門の広場の街角に、ダークグリーンの組立て式の臨時共同便所が並んだが、これはポツクス式で扉もついていた。このように、進んだ部分はすすんでいるが、永年の習慣で明けっ放しで平気なのが大部分であることは事実である。



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