2015年12月25日
大正の留学日記(6) 坪田英熙
卯三郎は、8月22日夜行列車でパリ北駅発、アーヘン経由翌夕刻ベルリン着。「ドイツの山川草木感無量。人々の着実なるか服装の不美目につく」と敗戦国を観察。
賠償問題が決着したとはいえ、「独逸の物価騰貴の恐るべき、レストーラントは2・3日毎に1・2割の騰貴ある位に事々物々皆然り。然るにかかはらず一つの動乱あるなく一糸乱れざる処敬服の外なく為政者の巧者もあるべし」と評している。
労働者の賃金が大学教授の報酬より高いと知って、「之れ全く根本は労働者階級に宜しく働かずして食する人々に悪しく誰なり共働きさへすれば食するに足る国情あるが故なり。資本分配の独逸に於て公平なりや否やは知らずと雖も資本分配の公平は国家を安泰に保つ所謂なるを知るべし」とちょっとした資本論を展開する。 (続く)