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2016年1月12日

akira's view 入山映ブログ 民主主義

 四谷のとんかつ「三金」が閉店した。神谷町の「砂場」も閉めて久しいし、冷やし中華なるものを生まれて始めて食べた経堂の「代一元」もなくなって何年経つことだろう。学生服を着ていた頃からの店がなくなるのは寂しい限りだが、反面その頃からの五反田の「グリルF」、恵比寿の「キッチンボン」さらには渋谷百軒店のカレー屋「ムルギー」などが今なお健在なのは嬉しい。

 最近でこそ目新しいレパートリーといえばエスニックに偏っている嫌いがあるが、かつてKFC等という代物が登場する遥か以前、チキンバスケットというしゃれた食べ物で若いカップルの心をつかんだ赤いチェックのテーブルクロース・銀座の「キャンドル」も姿を消して久しい。今時は珍しくもないイタリア料理の数々を紹介してくれた店のいくつかは今なお健在だが、余りに無惨な有様になり果てた店もあるので、実名の紹介は控えたい。

 喫茶店と雀荘が斜陽産業の代表のように言われたのはともかくとして、食べ物屋さんの場合には後継者難が大きいのではないかと想像する。一方では求人倍率がどうだとか、上野にテント村ができたとか、一面的なお話が多いのだが、手をかけてうまいものを食べさせよう、そのためには修行もしよう、みたいなのは当節一部のお寿司屋さん、威勢の良いファストフード、さらには庶民には余り縁のない高級店を除いてはとんと聞かなくなった。

 そもそもがセントラルキッチンとやらで、安ければ良いだろう、働く人は暖め役とお運びさんだけ、というのが世の大勢なのだから慨嘆してみても始まらないのだが、いづれ回帰が始まるのでは、と期待したくもなる。世に言うバービルなるものが、酒を商う店とその従業員の質を著しく低下させたのと同じように、食べ物屋の大型居酒屋化現象、ビル一室のテナント化というのもその観なしとしない。

 選んだ品物をしっかり出している店というのは、絶対に繁盛している。医者に脅かされて禁酒をしてから半年になるから最近の事情には疎いが、こうした二極分解はいづれ落ち着くところに落ち着くように思う。それが何も東京に限った現象でないのは、最近の元気の良い地方都市にも明らかだ。プロバンスを案内してくれた中村博士(11,15)は近著「都市を作る風景」(藤原書店)の中で、こうした地方都市の動きは民主主義の復権そのものだと喝破されている。この言によれば、小振りのおいしい料理屋さんが街に増えれば、菅政権よりも早く日本に民主主義をもたらすことになるのだが。

2010年 06月 11日



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