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2016年2月12日

akira's view 入山映ブログ 中央アジア

 4月のキルギスタン(正式名称ではないが、日本ではこの方がよく知られているので便宜使用する。以下の中央アジアの諸国も同じ。)争乱によってバキエフ大統領が失脚、追放された事件は周辺の中央アジア諸国、就中政治指導者に大きな波紋、というより恐怖を与えた。というのも、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンといった国々は、何れも90年のソ連からの独立、CIS諸国成立の経緯を共有している。さらに、独立に際しての民主化の幻想、その後の権力の独裁化と必然的な腐敗、一族政治(nepotism)の蔓延といった政治現象が驚くほど共通している他、複数民族国家として民族間の強い反目を国内に抱え込んでいるという事情もほぼ同じだからだ。

 突然中央アジアの話が飛び出したのには訳があって、古くからこのブログを読んでいてくださる方は2008年8月に4・8・9・10と4回にわたって掲載したCELA(中央ユーラシア指導者アカデミー・HPはwww.celaprogram.org)に筆者が参加した記事を記憶していただいているかもしれない。詳細は繰り返しになるから避け、中央アジア諸国から素晴らしい若者たちを集めてイスタンブールで開かれているワークショップだ、と紹介するに留める。そのディレクター・アダムが英国のジェーンの紀要に寄稿した最近の中央アジア情勢の分析(http://jir.janes.com/public/jir/index.shtml)が実に見事だったので少し紹介してみたくなった、という訳だ。

 内容については彼の論文をあたっていただくことにして、考えさせられたのはこれら諸国の指導者が例外なく独裁化し、かつ腐敗、一門の利益誘導に走った、という事実だ。キルギスタンで今回失脚したバキエフの前は、90年革命で颯爽と登場したアカエフ大統領だった。エンジニア出身の彼には哲人の風格さえあり、机を隔てて中央アジアの将来について真摯に語る姿には魅惑されたものだった。筆者に人を見る目がなかっただけの話かもしれないが、「あの」彼が後には利権まみれの腐敗を問われて失脚、と聞いた時には耳を疑った。権力の座というのはかくも人間を変えるものなのか。とはいえ、途上国のみならず、権力者が利権・金権にまみれる話はそんなに珍しくない。何も遠くまで出かけることのないのはご承知の通りだ。一族に対する依怙贔屓にしても、そのレベルが二世政治家や親族の秘書登用位のことならば永田町辺りにゴロゴロしているし、一族に出世した人間が出れば、よってたかってその世話になるのが中国の常識だとも聞いた、公私の感覚というのは元々相対的なものだ。

 にもかかわらず、娘を国有ガス会社の社長にした、息子を(膨大な利権を伴う)地方長官に任命した、という類の話を聞くとどうしようもない違和感があるのはなぜだろうと思う。それぞれの行為は当該国では合法的であるかもしれないのに、である。それはもしかすると何十億円という高給を貪る経営者に感じる違和感と同質のものかもしれない。それこそ「旧いやつだとお嗤いでござんしょうが」そんな感覚をなくしたくはないし、この国がそれを喪うのを見たくない。いや、退屈なところに話が落ちた。

2010年 07月 20日



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