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2016年2月18日

あるべきよう(4)(ゲシュタルトに引付けて) 斎藤玉男

 問題はあるべきようの欠けた場合である。
 あるべきようが大幅に欠けた場合は却って始末がよいとも言へる。程々に聊か欠けた場合、これが現実には大きな支障となることが通例である。ここで少し言ひ方の角度をズラして言うと、程々に聊か欠けたあるべきようは、現実には聊かも欠けないのと通用価値では同じことになるから。
 と言うと随分ヘンにきこえるが、差当り初めにあげた負傷工員の場合、その片手は現実には切られたに間違ひないのだが、工員の精神の中のその片手は今も十全具足して居り、具足して居ることその事が今としては実は厄介でもあるのである。これはオモカゲでもなく椎理のデッチ上げでもなく正(まさ)しく精神の中の事実なのである。
これで判る通り、一人の人間はいつも重なり合った二つの存在として存在するので、このありよう以外に存在のありようはない。肉体である本人存在が一人と、精神の中に位置して身体と精神の両方を支配する存在が一人と。



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