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2016年2月19日

akira's view 入山映ブログ 氷河特急

 スイス国鉄の氷河特急(Glacier Express)の事故には、二重の意味で驚かされた。

 最初の驚きはいうまでもなく。スイスの鉄道に事故が起こった事だ。欧州を列車で旅した事のある人なら誰でも同感すると思うが、ドイツとスイス、就中スイス国鉄の列車運行の芸術的なほどの正確さと確実さは一頭地を抜いている。具体的な国の名前は挙げないが、事故が起こったと聞いても余り驚かない鉄道もないではない。しかし、スイスに限っては、という思い込みのようなものがあった。

 第二の驚きは、その事故の原因がはっきりしないままに、運行が再開された事だ。先ず日本では考えられまい。この国鉄当局の判断について、現地の反応がどうなのか詳らかにしないが、批判めいた論調がないとすれば、安全というものに対する感覚がずいぶん違うのみならず、少し狂っているのではないか、と思う。事故の明らかな原因が判明しない、知る限りの原因と思しきものは全てチェックして安全は確認した。よって運転を再開する。再度事故が起こったとしても、その事態を公表しての事だから、それでも列車に乗った旅客の自己責任だ、というのだろうか。

 自己責任議論だとすれば、そこまで徹底するのは一種爽快でさえある、ピサの斜塔のてっぺんに手すりなどはつけないで、落ちたとすれば落ちるやつの責任だ、というあれである。ただ、事故原因が不明のまま運転を再開する理由は、おそらくドル箱列車だという採算面。さらには(自己責任に立脚する)観光客の要請、ということになるのだろう。前者はJR西日本に対して、採算性重視の安全無視としてマスコミが厳しく糾弾した内容そのものだ。後者については、それが風土として存在しているのならいうことはない。

 ただ、大量交通機関の安全性というのは、ほぼ全面的にサービス供給側に結果責任がある。単なる確率論で割り切る訳にはゆかないように思う。だから、これまで運行中に類似の事故は起こらなかった。点検の結果知られる限りの事故の原因と思しきものは全てセーフだった。だから起こった「この」事故の原因は解らないが、いづれ解明されるまでは、安全だという想定のもとに運行しよう、というのは明らかな誤りだ。(もしかすると原因は大方見当がついていて公表していないだけかもしれない。それはまた別の問題を提供する。)いずれ事故原因と思しきものが特定されよう。それまでの間運行を続けていても、氷河特急に事故は起こらないだろう。しかしこの瞬間、スイス国鉄は最も大きなものを喪ったと思う。

2010年 07月 27日



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