2016年2月26日
緋連雀(1) 板倉靹音
聞きなれない鳥の声が耳についた。キィーキイーと呼びあい、チリチリチリというような声もきこえる。何だろうと思って病床を抜け出し、軒下に身をひそめてチヤンの木を見上げた。高い梢に数羽の椋鳥くらいの大きさの鳥がいる。その美しさに僕は息をのんだ。幅広の短い尾筒の先が実にあざやかな洋紅色である。背面は葡萄褐色、風切羽と尾羽は黒色で外辨青灰色を呈し、初列風切羽の先端は白く、尾羽と次列風切羽と大雨履の先端も洋紅色である。額と頬は栗色、嘴黒く、喉に黒班があり、目の所も丁度仮装舞踏会の黒い目かくしマスクをかけたようで、頭上には長い羽冠を逆立てている。こんな気品のある鳥を見るのははじめてであった。これが連雀かと思い、死ぬまでに一度連雀を飼ってみたいといったQさんの悲願を思いだした。