2016年3月2日
akira's view 入山映ブログ カナダ紀行(1)
米国はミネソタに所用があったのを利用して、かねて訪ねてみたいと思っていたカナディアン・ロッキーに行ってきた。なにせ岐阜県一県分の広さがあるというカナディアン・ロッキー国立公園のことだから、一週間やそこらの行程ではほんの「さわり」をなでた程度に留まるのだが、ま、それはやむを得まい。というより、その「さわり」をなでるのが一大事なのだ。
米国在住中に体験したことなのだが、旅行の計画を立てるにあたって、日本の感覚で地図を見て遠近を判断すると手痛い目にあう。土台距離感が違うのだ。公園の二大観光拠点として著名なバンフとジャスパー(それぞれがその名を冠した国立公園の中心地だが)のどちらかを出発の拠点としようにも、空港にもよるが、空港から3時間、4時間のドライブということになる。ここで早くもレンタカーによる休日という計画は断念の余儀なきに至る。空港到着後近辺で一泊すれば話は別だろうが、なかなかそれほどゆったりした行程はとれないのも貧乏性の日本人の通弊かもしれない。
天候に恵まれたこともあって、ロッキーそのものは期待に違わず、というか期待以上の壮大さ、美しさだった。広大なスケールに視野いっぱいに広がる景観が目白押し。参加したミニバスツアーも、よくありがちな員数合わせのようなスポットは皆無で、十分満足だった。スイスの山岳景観と並んで、世界でも有数のものだと思う。スイスといえば、宿泊したホテルでスイス人に出会った。お国があんなにきれいなのに、どうしてわざわざカナダまで?と聞くと曰く「スイスには熊がいない」。
カナダの国立公園には三つの御法度があるそうで、一つは何も持ち出さない。松ぼっくり一つ、枯れ枝一つ公園敷地から持ち出さない。二つ目はその反対で、何も持ち込まない。要するにゴミはしかるべきゴミ棄て(金属製の頑丈なものだが、熊が荒らさないように、人間でなければ開けられないちょっとした工夫がしてある)に棄てましょう、というお話。三つ目は野生動物に餌をやったり、その逆にいじめたりしない、ということだという。
自然をあるがままに保存し、人工の関与は最小限に留める、ということのようだ。だから山火事も消さない(焼け跡が自然の肥沃地になる)、雪崩止めの護岸や防壁も施さないのだという。これを哲学として麗々しく観光客に説く割には、松食い虫の被害には神経質で掃討作戦が試みられていたり、ゴルフ場、スキー場は(制限的にではあるが)開発可能とか、いくつかご都合主義が見えないではないが、それは致し方ないことかもしれない。むしろ、国立公園内はもちろん、国道沿いにも(先住民居留区を除き)一切の野立広告を禁止するとか、公園上空の飛行を禁止するといった施策の方をこそ評価すべきなのだろう。
2010年 08月 24日