2016年3月2日
緋連雀(4) 板倉靹音
連雀を餌づけるのは一苦労であったが、とにかく摺り餌につき、意外に早く人にもなれた。僕は枕もとにおいたり、軒に吊らせたりして楽しんでいた。けれども、キイー、チリチリチリと鳴くだけで、期待した美しい囀りはついに聞かれなかった。そのうえ驚くべき大食であった。鴬や雲雀のために苦心して手に入れた魚粉はまたたく間に減っていく。少しずつ穀類を多くしてみたが連雀は平気であった。少々嗜虐性の興味にかられて、これでもか、これでもかと、しまいには殆んど糠ばかりのような餌にしてみたが、彼はけろりとして、食べる量を増すことによってこれに抵杭した。二三日かまわないでおくと、籠の底には文字どおり糞の山が築かれた。僕はすっかり興ざめしてしまった。やつばり見鳥はつまらないとQさんが言ったが、全く同感であった。二週間ほどで僕はこの鳥を逃してやった。