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2016年3月3日

akira's view 入山映ブログ カナダ紀行(2)

 カナディアン・ロッキーで特徴的なのは、これらの観光地の全てがカナディアン・パシフィック鉄道の開発による、ということだろう。この大陸横断鉄道は1912年に開通するのだが、その最大の難所がいうまでもなくこのカナディアン・ロッキー山脈だった。谷間を縫い、トンネルを掘り、かつ当時の機関車牽引能力の範囲内で勾配設定が求められる、という至難な工事の中から、測量技師やその先乗りの地形鑑定のための強者たちが、(白人にとっては)始めての発見となる秘境や湖を数々見つけ出してゆく。

 さらに先見の明があったのは、これらの風光明媚なスポットの観光開発、特にホテル経営を鉄道会社の事業として力を入れたことだ。これは日本の鉄道省が、日本で最初の本格ホテルの一つ、奈良ホテルを明治42年(1909)に開業。大正4年(1918)には東京にステーションホテルを開業したのと軌を一にする。日本の場合、当節流行のビジネスホテルに毛が生えたようなものではなく、本格的、当時としては一流中の一流を志向した、というのが天晴なところで、その面影はついこの間まで、東京ステーションホテルのバーが、格式も、雰囲気も群を抜いていた事実にも色濃く残っていたものだ。東京駅は再開発が進んでいるようだが、果たして平成の後輩たちはどんなホテルを後世に残すのだろう。

 バンフ、ルイーズ湖、ジャスパーという三大観光拠点には、いづれもフェヤモントホテルが、一頭地を抜いた存在のホテルとして営業している。(フェヤモントはカナダ鉄道が買収。)バンフとルイーズ湖のそれは中世のお城を思わせる重厚な建築。ジャスパーの湖畔のバンガロー群はことのほか詩情豊かで、読者の中にかの地を訪れる機会がおありになる方がいらっしゃるようだったら、是非一泊をお勧めする。

 北米大陸の鉄道はいまや一部の例外を除き、貨物鉄道として存在している。カナダも例外ではないが、その貨物列車の長さは尋常一様ではない。二百両までは数えたが後は気持ちが悪くなって数えられなかったとか、踏切で列車通過に捕まって三十分待ったとか言う話をあちこちで聞いた。バンフの町を見下ろすケーブルカーから遥か彼方をゆく貨物列車が遠望されたが、やはりその長さたるや、遠目に見てさえ数十センチという代物だった。もっとも筆者の少年時代、国鉄の貨物列車も長大編成が多く、五十両を数えるのも珍しくはなかった。省エネだ、環境に優しいと能書きは沢山あるが、高速道路の料金をただにするくらいなら、貨物列車の利用促進とインターモーダルな輸送の利便化を図る方が、よほど時代を先取りしているように思われてならない。

2010年 08月 25日



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