2016年3月29日
若乃花・慶應・升田名人(1) 津村秀夫
ひいきの心理、ファンの心理というものは奇妙なもので、熱中しだすと気狂いじみてくる。バカな話だが、わたくしも慶応野球部がほとんど三十年来の御ひいきである。六大学リーグ戦が始まるとそわそわしてくる。いや冬の間からもう春の神宮球場をたのしみにして、慶応の新ラインアップを想像している。楽しんだり、心配したりしている。去年の秋なんかBクラスの五位に落ちて、惨状見るに忍びず。それでも秋の早慶戦が始まる頃にはもう春のラインアップを考えていた。どんな新人が入学するかと楽しみにしていた塩梅だから、お話にもならない。
投手で岐阜の清沢、遊撃で土浦一高の安藤が受験するという噂だつたが、はたして今春入学し、安藤なんかすでに神宮に出場して恐るべき天分を示している。試験に合格したと
いって喜び、その姿を目のあたり神宮球場でみてまた胸を躍らせるのである。まるで児戯に類する。アホウの骨頂である。