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2016年5月10日

akira's view 入山映ブログ 非営利(4)

 血も涙もないカネ儲けの営利会社、対、善意に満ちた社会改良者(do gooder)という二項対立の不毛さをこれまでに指摘したのだが、最近この両者の境界が曖昧なものだ、と感じさせるような概念がいくつか登場している。例えば企業の社会貢献とか社会的責任(CSR)といわれるものはその一つだし、慈善や援助では貧困問題は解決できない、として、極貧層を対象としたビジネス開発(BOP)によってその階層における雇用創出を伴った新しい手法が案出される、というのもそれだ。

 再び「営利」の定義に立ち戻ると、利益を関係者間で配分する。その配分の仕方には大別して二つあり、一つは一定期間(通例は一会計年度)の間に発生した利益を配当その他の形で配分するもの。もう一つは、そうした期ごとの配分は行わすに累積させておいて、解散時にその累積利益を配分するものである。日本の現在の会社法は、この二つをどちらもしない、というものは会社として認めない。逆に言うと、どちらかはしない、というだけのものならば市場制経済下の会社として認める、という訳だ。かつてはこの双方ともに行うもののみを認めていたのと大きな差が見られる。

 こうした動きが、営利会社の側からする「非営利」への歩み寄り、と見なすことが出来るとすれば、非営利の側も「よかれと思うことをやっているんだからほっといてくれ」という態度から、事業を行ってゆく上での様々な関係者(stakeholder)に経営や業績評価への参加を求める、とか、成り立ちの非民主性(前回参照)に対するヘッジとして、運営資金・原資に対する一定数の市民の参加を自己義務化する(public support test:PST)ことを通じて、市場テストによって検証されることのない自分たちの仕事というものを、多少なりとも営利会社と類似の土俵の上で評価させよう、という歩み寄りが見られるようになってきている。

 とはいえ、どちらもより良い社会を目指しているのだから、ユネスコ村のように善意と友情に基づいて、羊もオオカミも手を繋いで仲良くやりましょう、といった、前の総理大臣がおっしゃりそうなお伽噺が成立するはずもない。現在の社会で、事業規模からいっても、調達資金からみても圧倒的優位にあるのは市場であり、営利会社だ。これに比べれば民間非営利組織は言うに及ばず、政府でさえも比較にはならない。その営利会社の中には貪欲そのものの存在もあれば、弱肉強食を地でゆく会社もある。そうした会社経営者のむきつけの利益志向を非難しても始まらない。何らかの社会機能を果たす限り、あるいは少なくとも法人税を納めている限り、それなりに世のため人のためになっている。

2010年 12月 26日



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