2016年5月10日
北海道の原生花園(4) 野村彰恒
原生花園の佳人にはエゾスカシユリとエゾキスゲの百合科の植物が孤高を楽しむ如く咲いている。私の庭にも数年前から百合根を植えている。ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、タカサゴユリ、テッポーユリなどは次々に花を咲かせるが、タカサゴユリが一番花期がおそい。原生花園のエゾスカシユリのような強烈な色は原野にこそ向くが小さな庭園には向かないだろうとまけおしみを考えてみた。センダイハギの淡黄色の花もマメ科でハブ草の花に似ている。
陛下の行幸記念の歌碑のある砂丘の下の鉄路の踏切で網走市刊行の原生花園の原色パンフレットを買った。この中に転載されている戸塚文子女史の文章に、北浜の原生花園が北海道で一番好きなところであると書いてあった。この北辺の花園は華やかな感じでなくて、淋しい感じを通りこして、何か冷たい。人に非情さを感じさせる冷たさです。とも書いている。私達のように皆な美にうたれエキゾチズムに酔い、オホーツク海の雄大に吸いこまれた集団のなかにあっては「草原の一すじの鉄路」はおもちゃの線路の如く感ぜられ、冷たい非情というよりも別天地の楽園で小休止であったから。