2016年5月24日
瓦屋根(2) 田宮虎彦
平戸の町にいくには、平戸口という小さな港から、連絡船で瀬戸をわたっていく。着いたところが平戸の港で、桟橋にあがり、岸壁にそった道をしばらく歩いていって、古い構えの宿にはいっていった。階段をいくつものぼっていった部屋にとおされて、窓をあけると、眼の下に古い瓦屋根の家々がならんでいるのであった。何かの倉庫か工場の屋根といったような感じの屋根で、古い瓦屋根は今にも土にかえっていきそうな、くすんだ色あいに見えた。屋根の勾配も弓なりにくぼんでしなっていて、長い雨でも降りつづけたら、何のきっかけもなしに、突然、土煙をあげて、屋根は潰えてしまいそうであった。