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2016年6月7日

偶感(3) 三好達治

 別の「霞夫」宛書簡にも、蕪村の懇切なる先達ぶりが右と同じやうに窺はれる。同書簡には次の自作を擧げてゐる。「水に散りて花なくなりぬ崖の梅」さうしていふ、「此句うち見におもしろからぬ様にて、梅と云ふ梅に落花いたさぬはなく候。されど樹下に落花のちり敷たる光景は、いまに春色も過行ざる心地せられ候。想(さう)に情有之候。しかるに此江頭の梅は水に臨み、花が一片ちれば、其まま流水が奪ひて流れ去り流れ去りて、一片の落花も木の下には見えぬ、偖も他の梅とは替りてあはれなる有さま、まざまざと江頭に立るたたずまひ、とくと尋思候へば、うまみ出候。御嚙しめ可被成候。」まことに入念なあますところのない教示といふべきだらう。自作に就て、これだけの自註を加へるのは、よほどの自覚の作者にあつたことを証してゐる。さうしてその自信の、過信ではなく、自作の上にぴつたりと―、磊落の反面であらう潚洒な手際に表現されてゐる、そこを自ら見定めてゐる眼光の確かさには、今この書簡を読みながらも無上の快さを私は覚ゑる。



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