2016年6月23日
韓国への旅(4) 砂原美智子
あちこちを見せて貰った中で一番感銘深かったのは何と云っても、三十八度線国境を見学した事で、同じナショナリティを持つ国民が南と北と二つに分れてお互いに行き来する事も知り合う事も出来ず、とざされて居ると云う状態をこの目で見た時であった。特別許可を南鮮はもとより北鮮からも得て、アメリカ軍将校の案内でその接点まで行った時は何とも云えない気持ちにおそわれてしまった。両側何キロづつ(はっきり忘れてしまったけれど、四キロ位いづつだったと思う)かの中立地帯をはさんで、真中にひかれた三十八度線はあまりにも冷たく、そして無情なものに思えた。これまで何度となく外国旅行をしている私だけれど、その都度通り、そして見てきた国境とはあまりにも違いすぎていた。一片の血も涙も通っていない様な冷たさであった。日本の国がもしこれと同じ様な状態になっていたらと考え、今更ながらに戦争の恐ろしさを身にしみてしまった。