2016年6月28日
ガタの治療法(2) 島崎敏樹
毎週病室の回診でベッドからベッドへわたる日、私は床の上にちょこんとすわった患者さんによくいう――うらやましいですね、二日ぐらい私と代ってみませんか、あなたはお客と面接、わかい教室の連中に放言、そうですね、それから夜は委員会とか試写会とか、おつきあい、いいでしょう。そのあいだ私はかんご婦さんの世話でピンポンしたり、コーラスにひっぱりだされたり――では大変だから、風邪気でどうもとか言いつくろって、一日中ねてます。
患者さんたちはものぐさと人ぎらいに心がかたまってしまう精神分裂である。冗談めいてこんなことしゃべっても、ボサリとしたまま笑顔もかえさない。
なんとかこの人たちの心に水をふくませてしめり気を回復させなくてはいけないが、私自身はといえば、ぎしぎしよせてくる雑件的用務でやはり一種の水気不足の状態に干あがってしまいそうである。二日ほどでいいからねそべっていられたら。