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2016年7月5日

akira's view 入山映ブログ ヴェニスのカーニヴァル

 東京の桜も満開を迎え、例によって無情の雨を嘆く日曜日とはなったようだ。歌舞音曲自粛とかで、いまひとつお花見は盛り上がらなかったようだが、落花狼藉の大騒ぎがない分だけ、心静かに花を愛でることは出来たかもしれない。ただし、自粛自粛でさらでだに好調とは申しかねる消費景気が落ち込むようだと「合成の誤謬」ともなりかねない。兼ね合いの難しいところかな。

 だからという訳でもないが、先のシチリア旅行で最後に立ち寄ったヴェニスの印象記等を書き留めておくことにする。もともとはオペラ旅行のこと故、火災から復興なったフェニーチェ歌劇場でのラ・ボエーム鑑賞が主眼だったのだが、折しも音に名高いヴェニスのカーニヴァルの時期と重なったので、思わず楽しい経験もできたことだった。

 フェニーチェは世界で最も美しい劇場の一つだろう。見事に復興されていた。経済不調だの、EUの問題児扱いされることも多いイタリアだが、その底力を垣間みた思いはある。何度訪れても不可思議な魅力の虜になるヴェニスと言う街もさることながら、オペラという芸術がしっかり風土に根ざしているという感覚を改めて感じたことだった。ボエームの方は、ミュージカル仕立てとも言うべきモダンな舞台構成と演出で目を奪った。悪趣味寸前の趣向(二幕のムゼッタは、ワルツを歌いながらなんとストリップまがいで下着一枚になる。)なのだが、踏みとどまってそれなりに楽しく見せたのは立派。最近流行の妙に理屈っぽい新演出とはひと味違う、といってよいのかもしれない。かといって、この傾向に歯止めが利かなくなることを想像すると少しコワイ感じはするが。

 カーニヴァルの方は、これは掛け値なしに圧巻だった。復活祭の前は四十日間の禁欲的な期間。その前夜祭は思い切って大騒ぎをしよう、と、考えることは世界中似た様なものなのだが、中でもヴェニスのそれは音に聞くだけのことはあった。あのサンマルコ広場が、とにかく雑踏で歩くのもままならない。その大群衆の半分近くが何らかの仮装をまとっている。それこそひと財産はたいたのではないかと思われるほどの中世風の衣装から、お手軽のそこいらの屋台で買い込んだ例のヴェニス風のマスクをひっかけたのまで、千差万別だが、思い思いにこの季節を楽しんでいる。この期間イタリアのあちこちで、日本の七五三のように、子供にクラシックな服装をさせている光景が目立ったが、ヴェニスはその集大成とも言うべき趣である。一行の中に日本から侍衣装を持参したメンバーがいたのだが、これに写真を撮りたいというリクエストが殺到して、ご本人曰く、一生でこれほどモテたことはないと。

2011年 04月 09日



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