2016年7月8日
akira's view 入山映ブログ ラ・バヤデール
東京バレー団の「ラ・バヤデール(神殿に仕える踊り子)」公演に行ってきた。騎士ソロルを踊る筈だったドイツ人が、ドイツ政府の渡航自粛で来られなくなり、その代役が足を傷めるという障害の連続だったが、急遽オランダからゴールディングを迎えてやっと挙行。そのうえダブルキャストを組んでいたガムザッテイ役の一人がやはり急病で、田中結子が連投になる。やりくりでやっと開演にこぎ着けた筈が、開演時刻になってもなかなか始まらない。十分くらい過ぎたところで舞台袖に主催者が現れ、指揮者がまだ来ていないので、コンサートマスターが代役を務めるとアナウンス。さては指揮者も逃げたか、と客席で囁きがもれていると、再度主催者登場。「指揮者が到着しました」というので満場の拍手。
震災、というより原発の余波で紆余曲折があったが、舞台そのものは全くそんな影響を感じさせなかった。振り付けはマカロワ版ということだったが、これが見事の一言。特に二幕の冒頭、バヤデールの亡霊たちが出現する場面の美しさは、全てのバレー舞台のなかでも出色の出来というべきだろう。最近流行のいかがかと思われるいオペラの前衛的な演出と異なり、比較にならないくらい多くの約束事の中にありながら、これほど見事な新機軸が打ち出せる、というのはバレーの素晴らしさだろう。ニキヤ役の上野水香、ピンチヒッターのゴールディング、それに田中結子を始め、脇役、群舞いづれも素晴らしい出来だった。何よりも、これほどのバレー団が佐々木忠治氏を中心とした一民間団体に依って組織されているという事実には驚嘆の他はない、国立劇場にぶら下がっている官僚OBや御用評論家たちは爪のあかでも煎じるとよいように思う。(ちなみにこのテーマで佐々木氏には「怒っている人集まれ」(新書館)という刺激的なタイトルの著書がある。一読をお勧めする。)その佐々木さんの健康が優れないと聞く。一日も早い本復を祈りたい。
いつかも書いた(11.1.24「ベルリン・バレー」)が、佐々木さんの組織(NBS)主催公演の会場は会場スタッフの躾けが実によくて心地よい。NHK主催公演の喧噪に較べればほとんど天国と地獄の差があるといって良い。
2011年 04月 16日