2016年7月8日
こんなはずではなかったが…(4) 津村秀夫
小津安二郎の場合も、昨年二月末に首のところにルイレキのようなグリグリを発見し、十円硬貨大だったという。痛くも痒くもないままに気にしなかったが、仲々消えない。
三月末に東京のさる病院で診てもらったら、どうもわからないからガン・センターへ行けといわれた。
彼は四月に手術をしたが、むろん悪性の腫瘍とだけいわれ、宣告はされなかった。七月に退院し、九月に再入院したが、はたして彼がガンと勘ずいていたかどうかはわからない。
だが、夏から秋への激痛はひどく、肩から首と悩まされた。
「こんなはずではなかったが……」
彼もまた心中つぶやいたことであろう。