2016年7月12日
akira's view 入山映ブログ 財政再建
このところの震災と原発でその余のことはすっかりひとびとの関心から遠ざかってしまった。が、耳目に触れようが触れるまいが、問題の数々が依然として存在し続け、その重要性あるいは緊急性がいささかも喪われていないのはいうまでもない。とかく評判のよろしくない菅首相だが、過日の国会答弁で震災復旧と財政再建が彼にとっての二大課題であることを明言した。忘れてはいませんよ、というだけのことだ、と辛口の方もいらっしゃるだろうが、先ずは評価して良い発言だと思う。
震災復旧予算それ自体が財源問題に逢着しているように、全てのことがらは帰するところ財政赤字をどうする、というに尽きるようだ。流石にインフレでチャラにすればよい、などと威勢のよいことをいう人は少なくなったが、赤字恐るるに足らず、気にしない気にしない式の論客は、手を替え品を替えてあちこちに存在している。確かに単年度財政赤字はGDP比二桁を超えるアイルランドやギリシャ、スペインに較べれば6%に過ぎないと論じる人もいる。諸外国のように借金先が外国ではないというのも悪いニュースではないだろう。しかし、累積赤字が一年のGDPに匹敵するというのは今更いうまでもなく軽視すべきことではない。頑強に大きな政府に拘泥していたかに見えるオバマ大統領でさえ、富裕層への課税強化を引き換えに共和党の小さな政府路線との妥協を図った。わが国の民主党がばらまきマニフェストを引っ込めるどころの話ではない筈だ。
議員定数や公務員給与削減はシンボリックな意味しかないという人もいるが、先ずそこに手を付けなければ施策の真剣味が伝わらない、という意味では優先度が高いというべきだろう。ところが、それが現在微温的な対応に堕しているかは衆目の認めるところだ。いづれは消費税を核とした増税が必至なことはおそらく国民の大多数が理解している。ただ同時に、削減予算の多寡は別にして、天下り天国、税金の無駄遣い、さらには構造的腐敗ともいうべき既得権益に徹底的にメスを入れるのが先だろう、というのも理の当然だ。これをカッコ付きの「庶民感情」だと蔑視するのはいかにも不当だというべきだろう。あの事業仕分けで槍玉に挙がった事案の全てが全て合理的であった訳ではない。それは例の津波津波対策ひとつをとっても明らかだが、だからかといって、事業仕分けそのものをコケにしたような焼け太りが許されてよいというものでもない。まして、外郭団体の想像を絶する腐敗ぶりは、公務員の廉直なイメージが虚構であったことを余すところなく摘出している。
などというと、「オトナの議論」として、水清ければのたとえとか、摘発される小悪の財政的意義の小ささを抗弁する御用学者が存在するのもまた事実だ。改めていうまでもなく、位置エネルギーは途方もなく強い(10.1.25「位置エネルギー」)。しかし、それを打破するところにしか民主党政権起死回生の再生、存続の途はないように思う。
2011年 04月 20日