2016年7月14日
光秀城記(3) 棟方志功
「こゝは、明智光秀殿の居城趾でありますが、この御城は、御覧の様に特別な構成で築かれてゐます。他の城から見れば、一寸塔の様に高い、型の大変な城なのです。あまり、高みでないこのところですから、こんなに高さを見せたかつたのではないでせうか、勿論、その他の重要な仕組み.は、判りませんが、明智殿らしい事でせう。ナンとなくに真正直な、剛迅なモノ(・・)です」出口虎雄氏は玄関正面に衝立替りにしてゐた旧城の図取りと、その形を描いたものを見せながら、そう説明してくださいました。
石垣が、とても小じんまりと構へられた、階段が、丁度の足取りを運ばせてくれる、好あんばいはとても嬉しくありました。御本丸には、光秀殿、御手植と謂はれる銀杏が高々としてゐました。わたくしは、地べたに寝仰いでこの銀杏を写真機に取りました。「パパ、オーバーだネ」チヤコに笑はれましたが、わたくしは、そうしてこの銀杏を仰ぎたかつたのでした。