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2016年7月26日

akira's view 入山映ブログ ランメルムーアのルチア

 大地震、異に原発の余波は世界中を駆け巡っていて、日本に来たら被爆する、というのはほとんど常識化しているようだし、ずさんな管理で原発そのものに対する信頼性を喪わせた元凶だ、という見方も一般的だと見て良いようだ。斑だかぶちだかの猫がどう鳴いてみたところで、日本が信を喪った格好だという事実は覆う術もない。

 その影響は処々方々に出ているだが、これまで何回か触れた来日芸術家の訪問キャンセルが、今回のメトロポリタン・オペラの場合はかなり深刻だ。というのも看板スターの中横綱級の二人、ボエームのネトレプコとドン・カルロのカウフマンが原発の所為でキャンセルになった、というのだから、二人が目当てで切符を買った人にとっては、詐欺も同然という印象である。とはいえ、予期せぬ事情により配役代わることあるべし、とは明記してあるから苦情のやり場がない。またしてもあの東電めが、ということになるのが落ちかもしれない。

 ランメルムーアのルチアも、主役のディアナ・ダムラウこそ敢然として訪日に踏み切ったというが、エドガルドのジョセフ・カレーヤはキャンセル。この代役に急遽決定したロランド・ヴィラゾン(映画「戦場のアリア」のあのテノール)は、何と出演料の全てを義援金に充てる、と発表。棄てる神あれば、とはまさにこのことだろう。開幕直前にゲルプ総裁が特に舞台に現れ、今回訪日の経緯を報告した後で、代役の手配等、これまでの海外公演で最も困難なそれであったことを述べた後で「われわれの訪日が、他のオペラ・カンパニーの今後の訪日に良い影響を与えることを期待する。」と言った時には期せずして拍手が巻き起こった。

 それはさておき、主役のダムラウの声と演技は、まさに絶品というべきで、あの狂乱の場は、鬼気迫るものがあった。これまでに観たルチアの中で筆頭に位するのは言うまでもなく、ややオーバーアクションなほどの振り付けの中で、微塵も声の乱れがなかったのは素晴らしいの一語に尽きた。ダムラウの熱演にあおられたのか、一幕では声が出なかったヴィラゾンも、終幕では大張り切り。さかんにブラボーを浴びていた。ノセダの指揮は例によって明快で。いかにもMETらしい重厚な舞台装置と演出に、心から堪能した一夜だった。まさに生きているうちにこんな舞台に巡り会えたのは幸せであった。

 会場で親友の令息夫妻にお会いした。とかく高齢化がいわれるオペラ人口に若い世代が加わるのは素晴らしいことだし、さらにおよそオペラには縁のなさそうな友人の一家にオペラ好きが出現した、というのも心強いことではある。

2011年 06月 12日



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