2016年7月26日
現代文明と精神座談会(4) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
尾崎 その映画は見なかったけれども槇有恒さんの方は見たんですよ。
島崎 マナスルの方……。
尾崎 しかし、槇というのはいい年だけれども生えぬきの山男。強いですね。
丸山 あの人いちばん先輩じゃないですか。
尾崎 先輩ですね。弥陀ケ原で、槇と三田、板倉の三人の山もエキスパートが猛吹雪で死にかけて、板倉は死んだえらい大事件でした。昔の華族の息子と一緒に行って、ちょっと大事件でしたよ。槇さんえらい凍傷で、上野でダイドにしょわれて帰ってきましたよ。
島崎 槇さんの生活というのは一生涯山だけでしょう。ほかの職業というのはないんじゃないですか。
丸山 あの人は慶応でしたね。
尾崎 私の方に小田原出身の辻村というかたがおられて……。山の本なんか書いてますね。
島崎 山にとりつかれた男たちというのは何人も知ってるんですが、来週、やはり串田孫一門下ですけれども、知り合いのお嬢さんが結婚するんで招待状が来たんですけれども、相手はどんな男だというと定職がないのです。あとを、じゃどうするんだというと、志賀高原にヒユッテを建てて山田牧場をしょって立ってとにかく住まうんですと。驚くべき生活力ですね。