2016年8月1日
現代文明と精神座談会(8) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
島崎 いまの上高地はだめですね。実はぼくも去年の秋、友だち二人と若いお嬢さんを連れて、八方尾根まで行きました。どうせぶらっと行って五千尺に泊ればいいと思いましたがけんもほろろです。「春から予約です」と……。どこにも泊るところはないんです。旅館はみんなデラックスでして、アルプス・ムードですね。わずかばかりの白樺で豪華なものです。何軒もあるんですけれども、全部歩いてふられました。しょうがない、ねばれと思いまして、二時間くらい宿の番頭にねばりましたがだめなんです。そのうちにうまいことに気がついた。「今年松本でわれわれの学会があるんだ。お客さんが千五百人入る。兄が会長で、私が副会長だが、来年の春六百人は上高地に来るんだしと言ったら、「じゃ、泊めましょう」(笑)と泊めてくれた。しかし無理なかったんです。布団がないんです。大広間の一偶で、寒い晩でした。ひどいもんですよ。あれで昔ですとみなリュックを背負うなり、相当ないでたちで行ったんでしょう。いまは熱海に行くのと同じ服装で行っている。
斎藤 上高地銀座……。