2016年8月3日
現代文明と精神座談会(10) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
島崎 それは多少お答えができるんです。一昨年、うちの山岳部を動員して調査やったんです。谷川岳に登る連中の調査をやろうとやった。雑誌の「山と高原」で応援してくれて、六月の末、梅雨のあける頃、これから人がどっと出るという時です。七月に入ると 列車千五百人収容する。だいたい六千人上越線に乗るはずなんです。だから六千枚刷りまして、山歴何年とか、あなたはどういう山に行きましたか、今度の山行きはどことどこを回りますか、靴はなに、雨具はなに、食糧はなにと書いてある。うちの山岳部の連中手ぐすねひいて待っていたんです。そうしたら、その日夕方から南のしめっぽい風が吹きつけまして、天気図見ると台風が西から来まして、私どもの予想では本州を縦断して秋田の方に抜けるコースなんです。谷川あたりもめちゃめちゃに荒れるコースだ。これはしまった山岳部の連中、「先生どうしましょう」「とにかくやろう、台風にもかかわらず行くやつおもしろいから、絶好な条件だ。おもしろいからやろう」というので、やったら、約四百人回答が出た。そのうちの30%はいま言う軽装というか、ズックの短靴、それで食糧は一、二食くらい持っていますかね。雨具もなし山ははじめて、ほんとうにひどいものですね。台風の来る谷川に向って行くのに、なんにもなしにやって行く。それを調べると団体ですね。土曜、日曜で、会社のハイキング・クラブというのでやるんです。そうするとBGなどが応募するわけです。とにかく行かねばならない、行ってどうなりましたかね。一生涯これで山嫌いになったと思うんですが……。