2016年8月23日
現代文明と精神座談会(22) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
島崎 この間、ぼくの秘書をしてくれるお嬢さんが、川端さんの「伊豆の踊り子」を読んでいたんです。ぼくもふと見たらあるものですから、時間つぶしに読んでみた。あれは翻訳しようと思ったら、絶対外国では通用しない思想ですね。外国では冒頭になにかあって、だんだんそれが展開して、いろんな事件が起こって、最後になにか結末がある。あれには起承転結というものがないんです。はじめから終りまでムードだけでいっている、抒情詩ですね。
斎藤 そういうことですね。この間フランスのだれだか、「雪国」の仏訳に感心していた人がいましたよ。
島崎 ぼくは青年時代、たいへん好きだったんですけど。
荻野 そう言えばたしかにムードだけですね。
尾崎 そうですよ、それでずっと押し通して来ているんですからね、四十年・・・・。室生さんなんかも図々しく押し通した人だと思うのですが、ただ時々、散文の文章として、詩として見れば別ですが、やっぱりがまんならないところがあるんですよ。
丸山 悪文の大家・・・・。