2016年8月31日
現代文明と精神座談会(28) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
尾崎 こっちから帰って行く時はホッとしますよ。私どもは梅の盛りの時分には、駅に降りると梅の匂いがする。そういうところですからね……。どうしても用があって東京に三日くらい泊ると、もう気持ちが悪くなる。いちばん悪いのは交叉点ですよ。止まっている信号ね。あそこに排気ガスがたまっているんですね、きっと。ほんとうに頭痛くなりまして、円タク途中下車ですね。
荻野 それじゃ、東京ではとても住めませんね。
尾崎 住めないですね。ぼくは淡水魚ですよ。(笑)
島崎 ぼくはまだ町のなかに住んでいるせいか、ぼくの理想は都心の十二階アパートのてっぺんに住む、そして月に一ぺんはたれも人間のいないところに住むということです。
尾崎 上はいいですか。
荻野 いいでしょう。
島崎 だいいち東京を真下に見下すなんて、じつに気持がいいと思います。それを言いましたら、「それを裏返すとロマンチシズムだ」と言うんだ。(笑)