2016年9月1日
akira's view 入山映ブログ 口福
懐かしいお店がいくつか閉店してしまった、と嘆いた(10.6.11「民主主義」)のだが、神谷町の「砂場」が店を閉めたというのは筆者の勘違いでご盛業中だし、四谷の「三金」も見附から少し三丁目寄りの二階に居を移してこれまた健在である。訂正がとても遅くなってしまったが、最近都心に出ることが少なくなった所為でもある。お許しあれ。
他方宮仕えをしなくなってから、多少遠出をして新しい発見やがっかりする経験にも出会うことが増えた。最近の食べ物屋さんで最大の収穫は伊豆は下田のとっぱずれ、水族館近くの割烹「辻」に止めを刺す。活きアワビの刺身だ、ステーキだ。蛤の酒蒸しにサザエのつぼ焼き、それに自家製の塩辛とおつけに漬け物がついて4千円でおつりが来る。お値段もさることながら、味は絶品と申すべく、小気味の良い店主の娘さんと思しき人のサービスの良さと相まって、これは感涙にむせんで良い代物だ。
つまらないことに感心するといわれるかもしれないが、箱根はポーラ美術館のティールーム。アイスコ−ヒーのアイスがコーヒーを凍らせて作ってある。溶けても薄まらない仕掛けだ。今年いっぱいはフジタの作品展で、世にも可愛い子供の職人さんオンパレードも眼福。ぜひお出かけをお勧めする。それにひきかえ、仙石原の薄野を抜けたところにある梢月庵というお蕎麦屋さんは、およそ愛想も小想もない女将が仕切っているが、それなりにうまいそばを食わせてご贔屓だったのだが、嵐の翌日で客が少なかった所為かどうか、あろうことか、茹で上げで時間が経ち、ひっ絡まってしまった蕎麦を供したものだ。こういうのはがっかりするよね。
寿司屋や料亭まで異人さんに星幾つと格付けされて喜んだり悲しむ向きも少なくないようだが、あれはガイジンさん(non-Japanese)向けのガイドブックだと割り切ればどうということもない。それよりも、TVで紹介されるお店にタレントが入って「オイシイイイ!!」なんて絶叫する番組がやたら増えた。制作費節減と提灯持ちの二股掛けなのだろうが、あんなので客が増えたり減ったりしたのでは、真面目にやっている板さんはたまったものではないだろうと、ひとごとながら同情する。まあ、食文化だけが大衆化、陳腐化の波から自由だという訳にもゆかないだろうが、敢えて紹介したくないお店を何軒か持っているのも今日日の贅沢かもしれない。
2011年 09月 24日