2016年9月2日
現代文明と精神座談会(30) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
荻野 もう一つ、東京の交叉点は、視覚でね、目が、こう来るでしょう。それで気持ち悪くなる人がある。
丸山 昔と違いますよ。昔はいい空気のなかにガソリンがあった。
尾崎 アクセサリーみたいなのがあったんですよ。今はとんでもない。
島崎 しかし、ぼくは銀座あたりでも、アルコールが少し入るとなんでもなくなって、自動車なにするものぞと思って、悠々と通るんです。そうするとむこうで止ってくれますね。だから心理的な、戦争みたいなものです。こっちが悠然と出ると、むこうが気圧されて……。
尾崎 私なんかその方ですよ。たまに学校に行っている子どもと落ち合って一緒に歩くことがあるんですが、年寄りだと思って腕を抱えたりするんですが、こっちは「うるさい」と言って、(笑)勇敢に突っ切ってやるんです。
丸山 萩原朔太郎さんね、あの人は横断できない人で、私のここにつかまっちゃうんです、両腕で。ちょうど盲が妙な歩き方をするでしょう。「先生、そう慌てなくてもいいですよ、必ず空く時があるんだから、その時にゆっくり歩けばいいですよ」と言っても絶対駄目、恐怖で。若い人につかまらないと駄目なんです。私がふだんの歩調で歩いていても、先生はこうです。