2016年9月6日
現代文明と精神座談会(32) 出席者:尾崎一雄/荻野彰久/斎藤玉男/島崎敏樹/丸山薫
尾崎 谷崎さんは優秀な教授ですが、学校じゃ洋行させるはずですのに、順番来ても行かないんですよ。
荻野 こわい・・・・。
尾崎 船に乗れなくて・・・・。だいいち東京を離れたことが一度。潤一郎さんが熱海でひっくり返った、その時に命がけで熱海に行った。その時きりですよ、東京離れたのは・・・・。
島崎 稀少価値ですね。
荻野 病気ですね。
島崎 そんなに東京離れたことはないんですか。
尾崎 ないんです。絶対ないんです。どういうわけですかね。
島崎 ぼくは外に出たくて、出たくて、しょうがない。ぼくは、どうしても女房から飛行機に乗るお許しが出ないんですよ。飛行機は落ちるものだと思っているんですね。ちょうどうまいことに、高知でこの夏、夏季大学がありまして来てくれというお知らせがあった。それを見ましたら、飛行機でもいいし、汽車でもいいとある。真夏ですよ、八月の初旬か中旬ですから、四国に入ってから煤煙を焚かれたらたまりません。「今度だけは飛行機で行くよ」と言ったら、今度だけは納得してくれましたが。一ぺん納得させればいいと思うのですが、女房もさすがに、今度だけは駄目と言いませんでした。女の人は落ちると思うんですね。しかし汽車だって踏切事故で最近やられますしね。(笑)