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2016年9月13日

akira's view 入山映ブログ カダフィ

 一世の梟雄、カダフィが無惨な死を遂げた。ユーチューブに流れた画面などから察するに、最後はリンチ同然の状態であったと思われる。カダフィの最後のみならず、リビアの政変を一連の「アラブの春」と同日に論ずることにいささかのためらいがあるとすれば、最後にNATOの軍事介入があり、直接的にはそれが体制崩壊の引き金を引いた、ということだろうか。自国民に傭兵とはいえ、軍隊の銃口を向ける愚行さえしなければ、NATOも軍事介入にまで踏み切ったかどうか。歴史に「たら」とか「れば」は禁物だが、最後の最後まで地上軍の投入には否定的であった諸国の反応を見ていると、そんな思いがちらと脳裏をかすめたりする。

 国家の経済的利害をためらうことなくむき出しにしてカダフィにすり寄ったり、カダフィ後の利権保全に走ったり、そんな「帝国主義」的な諸国の立ち居振る舞いを見ていると、日本という国は、とことん違うんだな、と思う。資源獲得になりふりかまわなかった第二次大戦時と、これが同じ国かと思うくらいの変わりようだ。反省しました、ゴメンナサイというだけではなさそうだ。ひとつには米国の占領政策が日本人が潜在的に持っている被虐的な性向と絶妙にマッチして、武力行使とか軍事力というものは、真面目に思考対象にしなくとも、どこかでだれかが考えてくれている、という世界観が抜き難い信仰もかくや、というほどに定着した。要するにドスの利いた外交は禁じ手になった。第二に、民主主義についての「劇画的」解釈が定着する。つまり、結果の平等こそが志向すべき理想郷だとされる。かといって、貧しくとも平等に、という覚悟がある訳でもない。豊かで、かつ平等に、という贅沢な理想こそが求めるものであるべきだとされる。(そもそも贅沢でもない理想などと言うのは求めるに値しないではないか。)この両者はもちろん同根で、みんなが仲良く平和なら、それが一番の理想郷ではないか、というに尽きる。

 これが行き着くところは明らかで、教育とか、訓練というものが全て糖衣をかぶせられ、口当たりの良いものだけしか摂取されない。結果の平等が保証されているのならば、努力の価値を説くのはよほどの変わり者に過ぎないからだ。それでも、先人が蓄積しておいてくれた遺産の食い潰しでなんとか21世紀まではたどり着いた、というのが真相に近いのではないか。だから、既存のモデルがそれぞれに行き詰まり、世界が代替パラダイムを求めているという、日本にとってこのうえない機会に、世界の思想を先導する能力もなければ意欲さえない、という有様に成り果てた。もちろんそれはそれで結構だが、結構でないのは、そんな情けない状態にあるという自己認識さえない、ということのほうだろう。カダフィの末路がとんだ落としどころに飛んだ。

2011年 10月 23日



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