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2016年9月16日

akira's view 入山映ブログ 山手線

 東京の山手線は、一周約一時間の環状線だ。通常は数分間隔で運転されているから、その間隔が維持されている限り、乗客は数時間前に事故があって所定の列車が数十分遅れていようがいるまいが、関心もなければ実害もない。ことは環状線に限らず、五分から十分間隔で運転されている都市部の電車についても事情は同じだ。ところが鉄道マンというのは律儀なもので、定められたダイヤに従って運転されていないと気になって仕方がないらしく、朝方に起きた事故の影響で列車が何十分か影響を受け、所定の列車がそのぶん遅れていることが念頭を離れないようだ。だから、回復して数分間隔で運転し始めているのに、「列車が遅れてご迷惑をおかけ」して「申し訳ない」というアナウンスになる。乗っている方は、何を謝られているのか判然としないが、どうせ駅や車内の放送というのは肝心なことは何も言わない、と知っているから別に気にもしないで聞き流す。

 企業不祥事における経営陣、あるいはそれを受けて「監督」官庁が行う記者会見で「申し訳ない」と深々と一列に並んだ面々が頭を下げる。こちらと山手線では、どちらも聴衆の心に訴えない、という点では共通するが、鉄道マンの職業的潔癖さに基づく「常識とのずれ」とはいささか趣を異にする。職責上やむを得ないからやっているけど、直接に責任あるとは思ってないもんね、という気配がありあり。のみならず、この謝罪行為がなんらかの債務を負担したり、賠償責任を意味するものでは金輪際ない、というのは先刻ご承知。そんなとき以外は頭を下げない、というお約束だ。ま、どちらもどうせ大したことを言いっこないよ、という暗黙裏の前提がある点では同じかもしれないが。

 「ありがとう」という代わりに「すみません」という文化は、謝罪の意味を少なからず変えているように思う。特に一対一ではない場面でのそれは、儀式的なプロトコルに堕していることは双方承知の上のパフォーマンスになっているといってもよいのではないか。問題なのはその「禊ぎ」で、何がどのように免罪になるのか、という点にある。というより、その行為があろうがあるまいが何の変わりもないが、とにかくその儀式だけは済ませておかねばならぬ、というお約束が存在する、という点にある。これが政治の世界にまで紛れ込んで、言葉が軽くなり、綸言が汗のごとくであろうがなかろうが大勢に影響ない、ということになると、世迷い言をまき散らす首相が現われてみたり(お辞めになった後も無恥厚顔にまだおやりになっている)、問責決議案などというものが乱発されたり、品性が疑われる様な暴言が国会質疑に登場したりすることになる。読み書きそろばんをもって初等教育の核とした先人の常識の健全さをいまさらのごとく思う。

 またしばらく入院でお休みします。軟弱で申し訳ない(これだ!)が、かなり消耗する治療なので。

2011年 10月 30日



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