2016年10月4日
akira's view 入山映ブログ リニア新幹線
時速400キロ、超伝導のリニア新幹線は、とかく明るい話に乏しい昨今珍しく素敵な話題で、着工許可も下り、最後の障害と思われていた途中駅の建設費負担の問題も解決した。これで関係者であれなかれ、こぞってサポートに廻るかと思いの外、鉄道OBから異論これあり、ということのようだ。(社)日本交通協会、というのはそのかみの帝国鉄道協会。鉄道OBのもっとも由緒正しいクラブ組織だ。そこが千葉商科大学の橋山礼次郎教授を迎えて「リニア新幹線計画の問題点」なる講演会を開いた。
その中味は要するに、地震、津波に強い東海道新幹線の補強構築こそが急がるべきで、リニア新幹線なるものは計画の妥当性がどこにも見出せない、およそ沙汰の限りとも言うべき雑駁な計画だ、という内容。そのあらましをかいつまむと、まずなぜ作るのか、という点について、東海道の輸送力が限界であり、かつ新幹線の老朽化が進んでいる。そのうえ地震対策も必須。更なる高速化の必要もあるという。この論拠が全て怪しい。輸送力限界説は、昨今の座席利用率が50%代に低迷している現状ではとても納得出来ない。老朽化更新の必要性は理解出来るが、それがバイパス新線でなくてはならない、まして更なる高速化の必要があるという論拠を耳にしたことがない。
誰がなぜ必要としているかが釈然としない上に、超高速であらねばならぬ理由が曖昧。従って、東京・大阪間を最短距離で、大深度地下トンネルによらざるを得ない、というのはその前提が立証されていない。のみならず総工費9兆円を自己負担で建設出来るほどJR東海の経営基盤は安定しているかも疑問。膨大な電力需要(新幹線の数倍)に供給体制が追いつくのか。さらに安全性や電磁波の影響などについても情報開示がなされていない。ましてこの計画が途中で挫折したらどうなるのか、等など。まあ、いささか姑の嫁いびり的な小理屈を含めて、徹底したネガティブ・トーンである。どうしてこんな杜撰な計画が独り歩きを始めたのかが解らない、とまで講師のトーンは上がった。
新規の大プロジェクトに否定論が跋扈するのは珍しいことではない。十河信二総裁の東海道新幹線計画そのものが当初愚挙と嘲られたのは有名な話だ。まして斬新な技術開発が前提とされる、ということならその風当たりも相当なものであろうことは想像に難くない。だが、一民間会社が社運を賭して壮大なプロジェクトに取り組もうとしている際に、普通なら応援団に廻る筈のOB組織がこれほど冷ややかな反応を示す、というのには違和感がある。まさか国鉄民営分割時の哲学の相違が(JR東海の葛西会長が一方のリーダーであったのは周知の事実だ)、遺恨二十年一剣を磨いていた訳でもあるまいが、善かれ悪しかれかつての「国鉄一家」の面影は求むべくもない。
2011年 12月 06日