2016年10月20日
私の戦争体験 戦争を憎み平和を守ろう(7)本多勇夫
〈恐怖の夜警〉
遺体を埋め終わったのは、敗戦直前でした。夜になると、野犬が遺体を堀りに来ますので、二人一組で夜の番をしました。暑い日が続いておりますので、夜中になりますと「キューキュー」と死体が鳴き動きます。そして、盛土の外へ手や足が「グラー」と出てくるんです。蒸れて膨張して動くんですね。
夜警は1時間交代ですけれど、もう生きた心地はありません。悪臭と恐怖に震えながら必死に野犬を追い払いました。
空襲のあった直後、豊川近辺の人達、とくに学生、生徒の親達は、遺体を引き渡して欲しいと工廠へ行ったのですが、「工廠は軍隊だから遺体はこちらで処理する」と言われ、一人も返してもらえませんでした。
遺体は戦争が終わって6年後、厚生省がやっと掘り出してくれました。そして身につけておいた遺品で身元が確認され、ようやく両親や親族に渡され自宅へ戻りました。身元の全く分からない遺骨が、260数体あったと聞いております。